
良き妻、良い母でいなければならない。そう自身に言い聞かせ、努力を続けたが生きづらさを感じてきた女性が、熊本の天草上島を訪ねたことをきっかけに新たな人生を踏み出した。
関西から天草に移住し、悩みを抱える人が生き方を見つめ直す場を作ろうと、絵本を並べて大人に読み聞かせをするカフェを開業した。
2月中旬の水曜日、熊本県天草市栖本町の「リトリートカフェりらいふ天草」に12人の男女が集まった。飲み物や菓子が振る舞われると、店主のはやまかなさん(48)が絵本の音読を始めた。
何でも持っている友人への贈り物を探す猫の話や、うれしい知らせを聞いて家路を急ぐが次々に災難に遭うおじさんの話など5冊を読み上げ、1冊ごとに参加者同士が語り合った。ワークシートに沿って「いま1番欲しいもの」や「自分を大切にしていると感じる時」などを語った。
「順番に1人ずつ話し、ほかの人は傾聴に徹して拍手を送る」といったルールがあらかじめ伝えられた。「ここで聞いた話はほかでは話さない」という決まりごとも。参加者はそれぞれの胸の内を素直に明かし、耳を傾ける人たちもまっすぐに受け入れた。
これが、絵本の読み聞かせを通じて大人を癒やす「絵本セラピー」だ。
はやまさんが絵本セラピーに出会ったのは5年ほど前。幼稚園児だった次男に絵本を読み聞かせると、自分が癒やされると感じた。
演じ続けた「良い子」「良き妻」「良き母」
幼い頃から両親の期待に応え…